空華
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空華U・クハプシュパ〜二胡と中国琵琶のための
大阪シンフォニカー交響楽団委嘱作品

〜曽我大介氏(ルーマニア国立放送交響楽団常任指揮者)のメッセージ〜

なぜ城之内ミサに委嘱作品を依頼したのか?
私達が特に西洋の音楽奏者として西洋的なものと日々つきあう中で、東洋人、日本人という拭い切れない私達ができることは何なのか・・・。
あるいは西洋人にはできないことが西洋音楽を通して出来るのか。
また 「博物館入り」 してしまい多くの人にとっては 「埃が積もっている」 様に見られる過去の音楽とどう付き合って行くのか、
また一般聴衆にそっぽを向いてしまった現代芸術はどこへ行くのか。
「クラシック音楽」 という世界はあらゆる意味で袋小路に迷い込んでいます。
将来的に何かそれを打破する道があれば、現代に生きる人々に受け入れられる現代の音楽を作り上げること。
現代の人間の心をふるわせることが出来る舞台芸術を創ることだと思っています。
そのなかで城之内さんならば現代に生きる人間として素直な感性を持って、私達の 「東洋人」 といわれる側面を、
厚化粧することなく、人々の心の中に素直に染み渡る音楽を創ってくれると期待したからです。
城之内ミサ 『空華U・クハプシュパ 〜二胡と中国琵琶のための』 について、
初めてミサさんのスコアを手にしたときの感動と、そこに著されている一見シンプルな音楽。
オーケストラの重厚な響きは東洋的でもありますが、そこにはモーツアルトの魔笛の 「ザラストロ」 を思わせるような
厳かな雰囲気があります。
そこには全く西洋的でも東洋的でもない神格化された荘厳さが伴っています。
そしてソリストの2人が奏でるメロディーはそれ自体、とてもシンプルかつアジア的なのですが、2人のソリストが重なり合い、
それぞれが強烈な主張を持ってオーケストラの響きのなかにとけ込んでいく様子は、
一種の宗教的な儀式を見ているような錯覚さえ覚えます。
長年ルーマニアの聴衆とつきあっている私にしても今回のミサさんの曲の演奏後の反応は独特のものでした。
今回の音楽は全ての聴衆に力で訴えたのではなく、人間の身体に清涼な水が染み渡っていくような
そんな作用を起こさせた気がします。じっくり感じる音楽。
そんな暖かい、すべての会場が感動とやわらかな空気に満たされた、そんな拍手でした。